毎日新聞は平成18年の企画として「理系白書06」なるものを特集する。「ニッポンは強いか」というタイトルだそうで、担当記者のブログによると「「強いか」、というのは、科学技術のレベルや独創性や科学教育の中身が、海外に比べて優れているか、という問いかけである。理系白書が主張してきた『人材こそが宝』『日本の科学技術のよい部分を戦略的に活かすべきだ』というスタンスを保ちつつ、視点を世界に広げて日本を位置付けたいと思う。」のだそうである。
その元村記者が新年早々発信箱でなかなか香ばしい「ニッポン万歳」記事を書いた。
発信箱:江戸のロボット=元村有希子
まず、ロボットということでドラえもんの登場である。困った時にドラえもんに頼るのは怠け者だとシナ人に言われた、とある。確かに野比のび太は怠け者であるよ。ああいう子供がいたら困ったものである。でもね、自分の非を認めることをせず、困った時にすぐに日本を叩いて金をせびろうとするシナにそんなこと言われたくないね。
「日本人にとってのロボットは、幸福をもたらしてくれる存在であり続けてきた。その愛情に支えられて、日本のロボット産業は発展している」のだそうだが、最初この文章の意味がよくわからなかった。また俺の読解力がないのかね、と思ったよ。よく読むと、日本人がロボットに愛情もっていて、その愛情がロボット産業を発展させている、ということのようだが、本当かね?多くの日本人はロボットなどに通常は無関心だと思う。アニメは別として(笑)。
関係者の熱意と努力こそがロボット産業を発展させているのではないかな。
本当に理系の見方、科学者・技術者の味方を任じるのであれば、「日本人の愛情」などと抽象的で曖昧なものを第一に賛美するのではなく、現場の努力にまずは言及すべきではないのか。
さて、幕末の佐賀藩の田中久重によるからくり人形である「文字書き人形」に言及するに至って、1つ気がついた。ドラえもん、鉄腕アトム、鉄人28号などが並んでいて、記者が日本人にとってのロボットはこれだという認識をしているらしいことがわかる。アニメは別と上で書いたように、確かにこれらは人間型であって親しみやすさを感じる。だが、これはロボットの一側面でしかない。どうも見た目の派手さ、華やかさだけに目を奪われているのではないかなあ。
科学史家の東野進という人が出てきて、久重は「人形ではなく人間を作ろうとしたんじゃないか」と言っているようだ。そう考えるのは自由であり、夢があってよろしい。でも歴史家であれば久重に関する史料にあたって、彼の真意を推測するくらいの慎重さが必要ではないかと思う。
そして最後の段落が笑えるのである。
「容易に妥協しない緻密(ちみつ)さは、戦後の日本を支えたモノづくり精神そのものだ。久重は明治維新後、東芝の前身となる工作所を75歳で創業している。外国の借り物ではない江戸の匠(たくみ)の技から、日本の製造業は生まれたのだ。」
日本の緻密なものづくりは戦後だけか、という突っ込みもあるが、まあそれは深入りしない。ただ戦前からの積み重ねがあるから、戦後の発展もあったのだ、と言っておこう。どうもこの新聞社全体がそうなのだが、戦前=暗黒という虚構に捕らわれているのではないかと感じるのである。
外国の借り物ではない江戸の巧みの技から日本の製造業は生まれた?
うん、確かにそういう側面もあるにはある。しかし明治維新に雇われ技師や学者として日本にやってきた米国人、英国人、ドイツ人、フランス人などは一体何なのだ?
多くの近代産業は欧米を模倣するところから始まった。江戸の巧みだけから現在に至る製造業が出てくるのか?
最初はマネでも、勤勉な日本人は欧米から多くのことを学び取ろうとした。勤勉な姿勢は確かに日本人の古くからの美徳であろう。そして有意の青年達はこうした外国人から学び、そしてある者は留学して、さらに欧米の科学技術の生の姿に触れ、それを日本に伝えて、更に発展させた。その発展過程で、江戸の匠という伝統が活かされて、和洋の融合が日本の近代産業を強くしたのだ。
様々な海外の文化を取り入れつつ、日本的な要素を加えて独自の文化を創り上げてきた少なくとも2000年の歴史を持つ日本の姿がここにも映し出されている。
いくら「ニッポンは強いか」という問いかけをしようとしても、最初からこんなずさんで脳天気な日本万歳では、新企画「理系白書06」に、客観的かつ論理的な展開など望めないではないか。
とここまで書いてきて、例のES細胞のウソツク教授のことを思い出し、この記事、韓国語で書いてあって日本という部分がテーハンミングッになっていたら、韓国の記事でも通用するのではないか、と感じた次第(笑)。
新聞お得意の、最初に(華やかな)結論があって、その結論に都合のいい素材を取材しているだけでは、一般受けする記事は書けるかもしれないが、理系白書の本当の目的は達成されず、むしろ地道に働いている科学技術の現場にいる多くの人間から疎まれる可能性すらあると指摘しておこう。
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