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2012年1月29日 (日曜日)

地震学者は狼少年化するのか

東大の地震研が首都圏直下型大地震が4年以内に70%の確率で起こる可能性があると発表して、けっこう世の中が振り回されているように思われるので、少しばかり考えるところを述べてみようと思う。

どうも想定外のことが起きてそれを予測できなかったというトラウマでもあるのか、俄に地震学者の声が大きくなったのが気になるのである。もちろん謙虚にこれまでの研究内容を見直し、地道に実証データを集めて、これまで看過されてきたことをきちんと把握し、より正確で信頼に足る高いレベルの研究成果を導き出そうとする姿勢は大いに支持したいところであるが、時流に乗じて世間の危機感を必要以上に煽って予算獲得を有利に運ぼうとするのであれば、それはあなた狼少年で、逆にそのうち信用されなくなるよ(信用されなくなったところで大きな地震に襲われるのが一番の不幸である)と言っておきたい。

まず、周期的に大地震が襲ってくるというのは、眉唾ではないか、ということ。ロバート・ゲラー東大教授が地震予知は不可能だ、予算の無駄遣いだと主張しているが、多分そうなのだろうと私も考える。人間の考える数十年から千年程度の「周期」と地質学的な時間の「周期」が果たして同期するのだろうか、ということである。発生メカニズムを考えればある程度の周期はあるだろうが、数十年程度のずれはあるだろうから、そうなるとこれはもう1人の人間が生きている間に1回しか起こらないか2回起こるのか、というくらいの違いになる。まあこれはきちんと実証データに基づいた計算でも何でもなく直感なので(笑)、逆に3回くらい大地震を経験する人がいてもおかしくはない。いずれにしても、少なくとも76年に1回やって来るハレー彗星のような訳にはいかないことは間違いない。

何が言いたいのか。東京のような地盤も脆弱、しかも複雑なプレートの上に立地する大都市では、いつお地震が起きてもおかしくないので、何年以内に何%の確率などということとは無関係に、常日頃から防災対策を心がけるべきだ。東海地震の150年周期説は恐らく石橋克彦教授の勇み足だろうが、そのおかげで東海地方の人達の防災意識は高い。同様の意識を首都圏住民も持つべきだ。

さて、直下型地震、すなわちプレート内地震であるから、津波の危険性はまずないと言ってよい。東北地方太平洋沖地震があまりにもショッキングだったので、皆過敏になっている。もちろん襲ってくるのはプレート内地震だけではない。相模湾あたりを震源とする1923年の大正関東地震のようなこともあるから、津波に警戒すべきであることは言うまでもないのだが、少なくとも「直下型地震」で東京が大津波で壊滅することはない。

それからインフラであるが、万全はないものの、明治以来の不燃化、耐震化の施策は百数十年積み重ねられており、その間の各地の大地震の影響も踏まえて、法制度も施策も後退したことはない。防災システムも進化している。堅牢建築物や公共交通機関にいれば、睡眠中の家具倒壊などを除けば、命の危険はまずないだろう。オフィスでは大型の設備機器が滑らないようにキャスターはきちんと固定しておくべきだ。

首都高速なども耐震補強が進んだので、阪神大震災の時のような崩壊は考えにくい。
しかしアクアラインのような海上区間、湾岸道路のような沿岸区間や山手トンネルのような長大トンネルが出来ており、またカーブも多いことから、道路外に放り出されたり転落したり、あるいは車両火災などの危険は考えられると思うので、道路管理者には更なる災害対策の進化を望みたい。

問題の1つは未だに多く残る老朽木造住宅密集地域である。東京ガス管内では大地震時の対策が進んでいるので、食事時でも火災の発生の可能性は低いと考えられるが、それでも地震発生時の時間帯や季節によっては火災の発生の危険性は考えられる。冬季の乾燥して風の強い時期などだと延焼が拡大する。これについても建替えや不燃化促進などの事業が以前から実施されているが、ごく一部の地区しか改善されていない。こうした老朽住宅は強い揺れで倒壊する危険性も大きい。一気に解決できる問題ではないので、考えられる各種の施策を組み合わせていくしかないだろう。

埋立地の液状化も、今回浦安あたりで露呈したように大きな問題である。地盤強化は費用負担の問題などもあり実現は困難だろうし、基礎がしっかりしていれば家屋の倒壊の危険性は少ないので、むしろ損傷した水道、ガスなどのインフラの早期復旧や住宅の修復をどうするのか、予め対策を講じておく必要があるだろう。

火災でいえば、大きな揺れに起因する東京湾岸の石油やガスの備蓄タンクの火災が問題だ。今回の震災でも実際に火災が起きているが、首都圏直下型となるとあの程度では済まないだろう。これは行政と当該企業とで対策を講じてもらうしかないのだろうが、我々も普段からその危険性を意識して、もしも近くで火災発生に遭遇した場合、どのような避難行動を取ったらよいのか頭に入れておく必要がある。

残るもう1つの大きな問題は、帰宅困難者対策である。公共交通に乗車していて命を落とす危険性は前述のような高くはないだろうが、長時間運行停止となるのは不可避なので、鉄道事業者の危機管理が重要である。PASMOで連携できるのだから、各鉄道会社は地震対策でもきちんと連携すべきだ。A社とB社で対応が違うのでは利用者の不満が爆発してパニックになってしまう。
無理して帰宅するなというのだが、恐らく強行軍で徒歩帰宅しようとする人はなくならないだろう。平時には頭で分かっていてもいざ大地震発生となれば平常心ではいられまい。オフィスビルに食糧や毛布などを備蓄して緊急避難所にする取り組みが進みつつあるので、これが実効性をもつような避難訓練や防災教育が必要だ。

「直下型大地震が襲ってくる→漠然と身の危険を感じる」という具合に漠然とかつ過剰に心配する必要はないだろうが、起こりうる具体的な事態を頭に入れて、いざという時どのように行動したらいいのかという、当たり前のことを再確認する必要がある。市区町村レベルの基礎自治体は徒に危機感を煽るのではなく、逆にこうした機会に、それぞれの地域性に適合した具体的な大地震対策を住民に周知すべきである。

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