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2011年9月16日 (金曜日)

突っ込みどころ満載の暴れん坊将軍に登場する彗星

テレビ朝日で暴れん坊将軍の再放送を見てしまった(1999年に放送されたもので、今回が何度目かの再放送だ)。水戸黄門にせよ銭形平次にせよこの番組にせよ、開始後45分くらいで決め台詞の出る勧善懲悪型の単純な時代劇はほとんど見ないのだが、15日の午前は彗星が登場したのでついつい見てしまった(笑)。

しかしタイトルは「暴れん坊将軍 江戸壊滅の危機!すい星激突の恐怖」なのに、実は登場したのは彗星ではなく巨大?隕石だった。このように突っ込みどころが沢山あるので、ちょいと遊んでみたい。なお、柳田理科雄の「空想科学読本3」で取り上げられているが、まだ見ていない。よって、見る前に自分なりにツッコミを入れてから、暇があれば同書を読んでみようと思っている(笑)。既に見ていろいろと突っ込んだことのある人には退屈だろうが、ご容赦いただきたい。

映像については、次のサイトがキャプチャー画像を貼り付けているので(商売ではないので、著作権の問題はひとまず棚上げして)、こちらを参照していただきたい。

 「暴れん坊将軍」で地球滅亡クラスの隕石が江戸に衝突するという驚愕のシーンが放送される
 「暴れん坊将軍」で地球滅亡クラスの隕石が江戸に衝突


1.彗星なのか隕石なのか小惑星なのか
番組のタイトルには「すい星衝突の恐怖」とあるのだが、画面に出てくるのは巨大な隕石のようなものである。しかも宇宙空間で炎のようなものを発しているのだ。彗星ならば核は岩石だとしても大半は氷のはずである。つまりこれだけ見ればすい星でも隕石でも小惑星でもない謎の物体なのだが、とりあえずは隕石か彗星ということにしておこう(そうでないと話が続かない)。

最初にこの星を吉宗が発見した時は赤色である。三国志演義などでもそうだが、だいたい赤い星は不吉な予兆として扱われるから、脚本上はそれでいいのだろうが、本来赤い彗星というのはおかしいのではないか。実際、地球に接近して来た時には赤くはなく炎上のものは紫色である。

彗星であれば、尾は太陽と反対側に影のように伸びるはずだが、この星は、太陽に照らされた昼間の部分の地球に接近していて、そうすると太陽を背にしているのだから尾は地球側に伸びていないとおかいしい。ところが画像を見ると逆なのである。まあ視覚的には進行方向に尾があるというのは視聴者からのクレーム続出が予想されるので、これもいたしかたないのだろう(笑)

2.驚異的な観測能力と技術
台詞がどうなっていたかはっきり覚えていないのだが、少なくとも最初に吉宗が「赤い星」を発見した時は望遠鏡(恐らくガリレオが発明したタイプの屈折望遠鏡)で見て、大きな点であった。

この星が地球に衝突する不安を感じた吉宗は、長崎から民間の天文学者「西川如見」を呼び寄せている(吉宗が如見を読んだのは史実のようだし、番組の最後でアナウンスされたように息子の正休は幕府の天文方に就任しているのも史実である)。呼びに出したのは早馬だとしても、やってきた如見は娘と従者の3人旅でのんびりと歩いて江戸に向かっている。

つまりどう考えても吉宗が使いを出してから、如見が江戸にやってくるまでに2ヶ月は必要なのである。
彗星の速度を40km/sとすると(ネットで調べて、このあたりがキリがよくて妥当だろうという数字)、吉宗が発見した時は、この彗星は地球から2億kmくらい離れていたのである。地球に一番接近した時の火星の4倍くらい離れている。そうすると望遠鏡の倍率や解像度を考慮しても、火星と同じくらいの大きさがないとおかしいのだ。しかし、実際はそうではない(笑)。江戸時代中期に2億kmも離れた岩の塊を屈折望遠鏡で発見してしまうのだから、これは驚異的である。イトカワから戻ってきたはやぶさもビックリである。

さて、如見先生は江戸の手前で尾張の密命を受けた世直し天狗党に襲撃されるのだが、こいつらも何故か彗星の衝突を予想していたらしく、如見先生を拉致して手先として使い、江戸の混乱に乗じて略奪を働き、倒幕を敢行しようという企みを持っている。まあそれは突っ込みどころとは直接関係ないので、これ以上深入りしないのだが、こいつらは幕末の水戸天狗党の走りなのだろうか(笑)。

この如見先生が襲撃された時が、彗星が衝突されると予想される日の一週間くらい前だと思われるのだが、如見先生は粗末な観測器具で、衝突の日時と軌道は既に予測しており、もの凄い能力である。

そして最終的には江戸近郊の日野の大和田村付近に夜落下し、4里四方が大きな被害を受けるとの結論を出している。軌道だけでなくエネルギーまで算出しているのだから、驚愕に値する。ノーベル物理学賞が当時あれば受賞していたかもしれないが、それよりもノーベル賞よりも世界的に権威のある西川賞が出来ていたかもしれないのだ(笑)。今日でも人工衛星の破片が人間に当たる確率が1/3200という精度なのである。

3.挙動不審で正体不明な彗星
そして、なんのかんのあって、吉宗の設置した観測所に閉じこもって、正確な衝突地点と時刻を予測することになるのだが、残りはあと3日である。

ところがこの時点で既に彗星は地球にかなり接近しており、画面から推測すると、地球の上空1500kmくらいの高度に達していると思われるのである。こうなると地球との相対速度は40km/sよりも大きくなっていくので、最終的に60km/s程度としても、25秒程度しか猶予がないのである(笑)。この彗星は大分遠慮してくれているようだ。尾の方向が逆なのは前述のとおり。

このあたりで炎のようなものを出しているのは、宇宙線と関係があるのか、地球の磁気圏から何らかの影響受けているのか、よくわからないが、いずれにしても不思議である。

また衝突直前まで上空から降りてくるように動いていて、これは納得できるのだが、何故か最後になって斜めに軌道を変えて、地平線と10度くらいの確度で滑るように衝突するのである。そして被害の程度がかなり限定された範囲に留まっているので、これはエンジンとブレーキを積んでいるとしか考えられない。そうなると、これは操縦不能に陥った巨大な宇宙船だったと結論づけるしかないのだ。そんなことは当然ドラマには出てくるはずもない(笑)。

如見先生の予測が正しいとして、め組の人達は大和田村から30kmくらいは離れていたと考えられる。そうでないと全滅ないし被害甚大だからだ。彼らはお産の仕事で大和田村にいた産婆のお凛を救出に行ったのだ。最終的な衝突直前のシーンから推測すると、この彗星(隕石)は直径2kmくらいはあると思われる。しかし多摩地区の山の高さを考慮すると、直径200m程度ではないかとも思われる。そうなると、め組の人達はそれほど衝突地点から離れていなかったとも考えられ、如見先生の被害予測が嘘という都になる。登場するシーンによって大きさが変動しているし、諸々の相対的な位置関係が杜撰なので、確定することは困難なのだ(笑)。うーん、困った。どうしよう。

とりあえず直径1kmくらいとしておきましょうか(笑)。
6500万年前にユカタン半島に衝突して、恐竜を絶滅させ、地球全体の気候を変動させた隕石の直径が10kmとのことなので、その1/10のサイズ。そうするとこの吉宗彗星は、かの彗星と同じ物質構成(つまり同じ密度)で同じ速度だったすると、体積が1/1000なので質量も1/1000で、運動エネルギーも1/1000。とてもじゃあないが、4里四方程度の被害では済むまい。単純に表面積で比較しても、50万平方kmくらいがやられるので、日本は恐らく全滅、朝鮮半島や沿海州あたりも大きな被害を受けるだろう。

とまあこんなところで、お後がよろしいようで。

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コメント

> 管理人様

面白い記事でございました。お疲れ様でございます。

平安時代とかですと、彗星や新星を始めとして、異常天体については、とりあえず密教の坊さんが祈祷して退散させるという方法だったようなのですが、江戸時代はどうだったかな?と、その方面での興味が湧きました。

投稿: tenjin95 | 2011年9月17日 (土曜日) 06時17分

彗星の速度が40万km/sというあり得ない数字だったのを修正しました(苦笑)。この間はツイッターで万を落としたのが、変なところで「帳尻合わせ」になってしまいました(笑)。

>>tenjin95さん
平安時代だと陰陽師あたりの仕事でもありますかね。
三国志演義では諸葛亮あたりも天体観測や占星術をやっていますよね。

江戸時代も人知が及ばなければ加持祈祷の世界だったかもしれません。明治時代のハレー彗星接近時の騒ぎを考えるとわかりやすいのかな、と思います。

投稿: フロレスタン | 2011年9月17日 (土曜日) 21時03分

突っ込みどころ満載ですね。

あの名作ウルトラマンでも故郷のM87の設定を伝言ゲームで間違えたらしくM78になったとのことです。散光星雲では生物は住めないから。

また、ウルトラマンの最高スピードがマッハ5という設定では地球の脱出速度以下なので、光の国は日本からたった300km離れた場所だそうです。

件の作品始め、TV番組の科学的背景はいいかげんですね。

投稿: outlaw | 2011年9月21日 (水曜日) 08時03分

>>outlawさん

M78星雲にはそんな裏話があったのですか。

ウルトラマンの最高速度に関しては、1960年代半ば過ぎの頃ですから、「マッハ」というだけで、とてつもなく早い、というイメージを振りまくことが可能だったのだと思いますね。私はウルトラQのスタート時からテレビで見た世代ですので、感覚的にそのことは理解できる(笑)。

しかし300kmじゃあ、上空だとすると地球大気圏の熱圏の比較的下の方にしかなりませんね。東京からなら豊橋くらいだ(笑)。

まあ、科学的な要素の設定がいい加減な方が突っ込めて楽しめますし、逆に厳密にやると何も起こらなかったり、破滅的になったりして、作品にならんのでしょう。

投稿: フロレスタン | 2011年9月21日 (水曜日) 12時03分

大川橋蔵の銭形平次をご覧になったら、面白さに気付かれると思いますよ。
平次が岡っ引きになる前のエピソードは格別です。

投稿: 匿名 | 2015年9月10日 (木曜日) 08時34分

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