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2010年5月19日 (水曜日)

公用語について考えてみる

157年前の黒船ショックがよほど大きかったようで、日本人の欧米コンプレックスは払拭しがたく、何かあると頭をもたげるようだ。最近は英語の公用語化の主張が聞こえてくる。

どうやらグローバル経済の中での「敗戦」がその背景のようで、日本経済の「ガラパゴス化」という言葉も好んで使われる。もちろん自虐的に。本来のガラパゴス島は、その隔絶された環境から、独自の生態系が成立した珍しくてよい例のはずなのだが。

私はまだ生まれていなかったが大東亜戦争の敗北後も、志賀直哉によるフランス語公用語化の主張などがあったが、この度は物理的戦争で敗北ではないものの、心理的には類似の状況なのだろう。

日本国において日本語の他に英語を公用語にするということは、公文書類や貨幣、標識などは全て2カ国語表記、教育も2カ国語で実施(英語で教育する教育機関が必要)など、公的機関での負担増となる。そこまで考えて言っているとはとても思えない。EUではその膨大な負担にもかかわらず、一部の例外を除いて加盟国の言語のほとんどが域内の公用語扱いであり、公式文書は各言語に翻訳される。

一方、ヨーロッパ大陸で公用語を英語と定めた国はない。ヨーロッパ全体でも英国とアイルランドだけである。以前オランダに行った時、スキポール空港の主要な表示がオランダ語だけなのには最初面食らった。字面は英語と似ているから慣れればいいんだけれど(笑)。英国から大陸に移動した時も、大陸に着いたとたん英語が目の前から消えた。しかし、ヨーロッパでは英語は普通に通用する。英語の出来ない人、あまりうまくない人、話せるのに話せないフランス人などがいるが、英語が出来れば旅行程度なら不自由はない。

日本だってそれと同じでいいじゃないか。公式言語は日本語だけだが、英語が広く通用する国。
例えば海外進出する企業経営者だって、絶対に自分で英語が出来なければいけない、ということはないだろう。有能な通訳をつれて行けばいいのだ。いざとなればあれは誤訳だったと言い張って自分のペースに持ち込める利点もある(かもしれない)。ビジネスで大切なのは英語力の前に、交渉力や企画力であり、相手国の文化や歴史に対する理解である。いくら英語に堪能でも、相手のペースに嵌ってまともな交渉が出来ないのでは本末転倒だ。TOEICの高得点者に仕事で使えないのがいる、という話も聞く。もちろん一人で全ての能力を備えていればそれにこしたことはない。そういう人材を育てることも必要だろうが、それが自己目的ではない。

英米の植民地だったり歴史的に英語のネイティブスピーカーが多数暮らしている訳でもないのに(今は実質的にアメリカの属国だ、という主張はとりあえず棚上げw)、英語を公用語にしている国などない。

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コメント

英語を公用語にするということは、日本国内では日本語は「一切」できなくても、英語「さえ」できれば万事オッケーであると公式に認め、実際にそれで困らないようにするための努力を惜しまないということなのですが…

分かっていない人が多いような気がします。

投稿: wagonthe3rd | 2010年5月20日 (木曜日) 19時56分

>>wagonthe3rdさん

はい、ご指摘のとおりですね。
雰囲気とかイメージだけで軽々しく言っている無理解の人が多いと思います。

投稿: フロレスタン | 2010年5月20日 (木曜日) 21時57分

ニュージーランドで、マーオリの人達が勝ち取ったテ・レオ(マーオリ語)の公用語化の歴史などを知っていれば、軽々しく英語公用語化などと言えないはずなんですがね。

投稿: wagonthe3rd | 2010年5月21日 (金曜日) 16時12分

>>wagonthe3rdさん

それは、私も含めて(^_^;)、知らない人がほとんどでしょう。日本語だけで全部用が足せてしまう国ですから。他国の言語問題にまで考えは及ばない。しかし主張するのであれば、事例をいろいろと勉強すべきですね。

投稿: フロレスタン | 2010年5月21日 (金曜日) 16時33分

成田空港の西海岸訛りな米語アナウンスが気持ち悪くてしょうがない。

投稿: JosephYoiko | 2010年5月28日 (金曜日) 18時40分

>>Yoikoさん

私は山手線など首都圏のJR東日本の英語の車内アナウンスが耳障りに感じます(笑)。私鉄やメトロの方がいい。

西海岸訛りの米語がかっこいいと思う風潮でもあるんですかね。

投稿: フロレスタン | 2010年5月29日 (土曜日) 08時05分

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