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2009年11月28日 (土曜日)

表面的な値段だけで語ってるんじゃねえよ

「国内最速」スパコン3800万 開発のあり方めぐり議論は必至 (ウェブ魚拓)

まずは浜田氏らのグループの受賞を祝福する。
こういう有能な人たちが若手・中堅にいることは心強い。そして簡単に手に入る部品でそこそこの値段で高性能のスパコンをつくれることを示したことも非常に有意義だ。

しかし、これは「国内最速」であり、処理能力は158TFLOPSというから、「世界一のスパコン」の10PFLOPSと比較すると約1/63。だからこれをもって百億円単位のスパコンが不要だと決めつけるのは拙速だ。マスゴミが飛びつきやすいネタがタイムリーに出てしまったものである。使用するスパコンがこの性能でよい研究であれば、これは朗報だ。しかしもっと処理能力が必要となる場合はどうするというのだろうか。

問題は予算の無駄をなくすことだから、単純に廃止とか大幅削減ということではなく、最も合理的な方法で「世界一のスパコン」(京速計算機)を開発しようとしたらどの程度の金額が必要かを公正に見積もる作業が必要だ。その上で世界一の必要性が本当にあるかどうか、研究目的と費用対効果や波及効果などを基に検討すればいい。少なくとも体育館での一時間の(財務相のマニュアル付きの)「人民裁判」で決着をつけるような話ではない。

上記の処理能力から単純に比例計算すると24億円でできてしまうことになるが、ことはそんなに簡単ではない。63倍の数のCPUをつなげは速度が63倍にすぐなるようなら苦労はいらない。現在世界二位のシステム(Roadrunner,約1PFOPS)が118億円だという。ということは今後の技術開発として考えるなら、10倍の処理能力だから価格も(初予算の1150億円という)10倍ではなく、10PFLOPSのシステムを最大でも500億円程度で開発できるかどうかがポイントになるのだろう。

行政刷新会議の事務局長は「科学技術を否定してはいない」と弁明している。そうなのだろう。
しかし仕分け人の態度や物言いは、当事者や科学者全般に科学技術を否定しているように受け取られたのだ。そのことは素直に反省すべきだ。これについては、次のブログ記事が参考になるだろう。
仕分け人の態度と監獄実験 - 岡田克敏

(追記)
世界一の速度かどうかが意味がある、というよりも、世界一の速度のスパコンを使う合理的な理由のある研究があるかどうか、というのが重要な論点だ。

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コメント

技術がすべからくソフト化(=英語化)された現在では、言葉の壁があるので、最先端技術を買っても日本は欧米諸国に対してどんどん絶望的に後れを取っていきます。

自分の専門分野以外の専門家と英語で議論できる日本人がどれだけいるというのでしょう。西洋と違ってリベラルアーツ(特に修辞学・論理学・哲学)が軽視されている日本では、日本語でだって心許ないのではないですか?

ハードの時代にはからくり細工の遺産で世界に追いつき追い越すことが出来ましたが、ソフトはそうはいかない。ハードと違って、もはや買って分解すれば中身が分かる時代ではないのです。

英語を公用語化するつもりがないのならば、少なくとも競争力の維持に不可欠な分野では、日本語で世界の最先端のことをやり続けるしかない。

それを諦めるのならば日本は衰退の道を真っ逆さまでしょう。

投稿: wagonthe3rd | 2009年11月30日 (月曜日) 16時57分

>>wagonthe3rdさん

まず、本論と関係ないところで、すべからく、は誤用ですね。
能書きたれると、「すべから」は「すべき」の変化形で、漢文の「須」の読み下しで使われ、「すべからく〜べし」という一種の係り結びで、是非〜しよう、というのが本来の意味及び用法ですね。

でもって、いただいたコメントは、ちょっと論点がずれているようです。技術者の英語能力の問題は、それはそれで議論すべきことですし、英語が使えないより使えた方がいいに決まっている。でもみんなが使える必要もないでしょう。

このエントリーはお金の使い方について論じているので、その論点でコメントいただきたく存じます。

投稿: フロレスタン | 2009年11月30日 (月曜日) 21時36分

誤用の指摘ありがとうございます。

論旨が分かりにくくてすみません。

日本がみんなが英語を使えなくてもいいという状況にあるのは、トップレベルの知識が日本語で網羅されている恵まれた環境にあるからだということが言いたいのです。

その状況を維持するコストを考慮にいれないで、目先の損得で考えると大きなしっぺ返しを喰らいますよということです。

つまり、表面的なコストだけで語っているんじゃねえよ、です。

投稿: wagonthe3rd | 2009年12月 1日 (火曜日) 02時49分

>>wagonthe3rdさん

補足説明ありがとうございます。
スパコンも肝はソフトですもんね。

トップレベルの知識が日本語で網羅されている、というのは江戸時代あたりからでしょうね。これは教育や学問に対する日本社会の姿勢が反映していると思うのですが、今は江戸時代より悪いかも知れません。

朱子学が幕府公認の学問でそのアンチテーゼが巷にごろごろ。国学なんてその典型ではありませんか。そして庶民は寺子屋へ。

管理貿易体制(いわゆる鎖国)で人数は一握りだけれど通事(通訳)もちゃんといた。瓦版などで案外庶民も外国事情をのぞき見ていた可能性も考えられます。

今の政府や社会の仕組みは翻ってどうでしょうか。日本語も外国語も中途半端なような気がしますね。

自分からちょいと脱線してしまいました(笑)。

投稿: フロレスタン | 2009年12月 1日 (火曜日) 17時09分

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