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2009年2月 1日 (日曜日)

ぐわしっ!

紅白ストライプの楳図かずお邸の景観裁判は「被告」の楳図かずお氏の勝訴となった。

赤白ストライプ邸、調和乱すとまでは…楳図かずおさん勝訴 (ウェブ魚拓はこちら)

「景観原理主義者」は反発するのだろうな。学問の世界で都市計画を専攻しているような私の知人や先輩後輩達の中にもそういうのが少なからずいそうな気がする。話を聞いてみれば実態はわかるが、だいたい結果の想像がつくし、一銭の得にならないのにそんなことをする気力もない。論文のネタにするなら別だが、新鮮味もないしねえ(面倒くさいだけだが(笑))。

という戯れ言はともかく、一応私なりの考え方を述べてみることにする。

まずは裁判の内容について。
記事中に「判決は、現地周辺には、外壁の色に関する法規制がないことや、他にも黒や青など様々な色の建物があることなどから、住民が景観を享受する利益(景観利益)を侵すことにはならないと判断した」とあるが、これは(日本の裁判所にもめずらしく?)まともな判決だと思う。

今でこそ景観基本法という法律もあるし、地区計画といった規制手段もあるわけだが、問題になるのは国立市の大学通りの例にも見られるように、多くの場合、当該地区にそうした法的な縛りがなく、実際に「目の敵にされる」建物が出現してから、周囲の人たちや場合によっては自治体当局が騒ぎ出したりすることだ。そして遡及的に事後の規制を要求して裁判に持ち込むのである。これでもしも裁判官の裁量で超法規的に景観規制が実現してしまったら、それこそ建築主は恐ろしくて建築行為ができなくなる。こういうのも官製不況の一因たりえる訳である。

ところが、どういう訳か、建築や都市計画を専門とする一部の人たちは、景観というと全てに超越するような錯覚に陥り、景観を守れと囃し立てるのである。彼らの頭の中には、たいてい中世で時間がストップしてしまったような欧州の中小都市や、英国流のニュータウン(日本で○○ニュータウンと名付けられた多くの場合安っぽい建て売り住宅地とは全く異質のものである)が頭の中に規範としてあると言ってよい。

ちなみに、(仕事を通じての私の知人でもある)当該自治体の武蔵野市長である邑上守正氏は早大建築学科出身の都市計画の専門家である。彼はどんな反応をしているのだろうか。立場上難しいのかもしれないが、是非考え方を明らかにしてもらいたいと思う。彼の政治的立場を考えれば、恐らくこの裁判結果は苦々しく思っているのではないかと推測する。

こんなニュースもある。
楳図かずお自宅の景観訴訟「毎月10万円払って」に変更
これでは、原告というのは、単に景観をネタに有名人にたかるごろつきに過ぎないではないか。
世田谷、杉並、大田(田園調布)、武蔵野、国立、芦屋などといった都市は、プロ市民や「市民派弁護士」あたりが活動しやすそうである。

次に建物そのものについて見てみよう。本来、周辺の状況も把握してコメントすべきであり、この新聞の写真だけでは断定はできない、という言い訳付きで(笑)述べることにする。この新聞記事の写真の右90度の角度から見ると、もっとどぎつく見えるのではないかという気もする。
とりあえずこれで代替する(^_^;)。YouTubeなのでいつ削除されるかわからないが。

屋根の「赤鉛筆」(上記の動画では「円柱」と称している)はちょっといただけない。
右90度には別の住宅が建っていて、この家からは鬱陶しいかもしれないが、逆にこの家が目隠しになっていて、それほど地域全体に悪影響を与えているとは考えにくい。ここが川とか池だったら、ちょいと問題かもしれない。

新聞記事の写真の角度でみると、向かって右手のバルコニーとその支柱、及び向かって左の半円柱の出っ張り部分には紅白ストライプはない。これが全て紅白ストライプであればいただけないが、さすがにそれは漫画家という一種の「芸術家」である楳図氏の美的感覚にも反するのだろう。また植栽である程度紅白の色のどぎつさが緩和されていると考えられる。屋根は「赤鉛筆」を除いた大半はストライプでなく、これもあまり問題ではないと思う。

個人的には、この屋根から飛び出した「赤鉛筆」以外は得に騒ぎ立てるほどのものではないと思う。ただし、もしも外壁が真っ赤であれば視覚的にどぎつく、くすんだ色を好むであろう伝統的な日本人の色彩感覚にも反することから、問題だと思う。

いずれにしても、もしもこの地区の住民が本当に、住民の多数がよいと思う景観を維持したいのであれば、事前に地区計画などの法的な縛りをかけるべきであったのだ。裁判に訴えてでも、あるいは賠償金を請求する、というくらい景観に財産価値のある地区であるならば、その維持のために日頃から地道な努力が求められることを忘れてはいけない。

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