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2009年1月11日 (日曜日)

だだっ子長野県

前から一度記事にしようと思っていた中央リニア新幹線のルート問題。JR東海の主張する南アルプス貫通のCルートを支持する、というかそれしかあり得ない、ということを考察してみることにする。

いわゆる中央リニア新幹線では、ABCの3ルートが候補に挙がっており、全額自己費用で建設すると表明しているJR東海は、当然のように最短ルートのCルート(南アルプスをトンネルで貫通する)を前提に事業計画を作っている。トンネル(トンネルは日本語で隧道=ずいどう=といいます、念のため)掘削の費用と、ABルートで迂回した場合の建設費増加と土地買収費用を天秤にかけていることは言うまでもないが、開業後の走行性を重要視していることは明らかである。

ちなみに長野県は地域振興という名の下に、おもちゃを欲しがる子供のように、諏訪、上伊那地方を通過するBルートを要望しているが、Cルートが東京・名古屋間約280kmなのに対して、Bルートは50kmほど長くなるようだ。

JR東海の計画では、あくまでこのルートは東海道新幹線のバイパスであり、完成後はのぞみの代替となる特急をリニアルートに走らせ、東海道新幹線はローカルサービスを重視する(緊急時を除いて、現状のひかり、こだまの機能に特化する、ということだろう)という方針だから当然走行距離の短いCルートを選択する。所要時間もそうだが、運営費用面でも大きく差が出る(路盤や車両の維持補修、エネルギーコストなど)。

Cルートの場合、沿線の各県に1駅設置というから、品川・相模原(橋本付近)・甲府付近・飯田付近・恵那付近?・名古屋ということになるだろう。駅間は5区間、平均約56kmとなる。のぞみの代替ということになると、現状のダイヤ構成や輸送需要から、東京・名古屋間ノンストップが最大9本/時間、各駅停車タイプが1本ということなると予測できる。列車間隔は平均で6分ということになる。

車両の加速性能を250 2.5km/h/秒、最高速度を500km/hとすると、最高速に達するまでに200秒、約14km走行することになり、ノンストップタイプで東京・名古屋間の所要時間は約36分ということになる。実際には加減速以外のすべての区間を最高速度で走ることはないだろうから、所要時間は40分程度ということになる。Bルートの場合だと、迂回による曲線区間での減速を無視したとしても約7分の所要時間増となるので、実際のダイヤ編成では50分と設定されるだろう。

ノンストップ列車1本につき10分の違い。これが累積された場合の国民的損失を考慮すべきである。
なまじ「鉄道」だと思うから長野県は変な欲が出るのであり、これは航空機と同等の機能の輸送機関だと考える方が妥当だろう。

一方各駅停車タイプはどうかというと、駅間距離を単純化してすべて56kmとすると、全280kmのうち半分の140kmは加減速することになり、最高速度で走行できるのは最大でも140kmということになる。各駅間の所要時間は10分程度である。ノンストップタイプが6分ヘッドで走行するので、中間駅では全て待避が必要となる。

各駅での待避時間を5分とすると(ダイヤ編成でもっと短縮できるかもしれないが)と中間駅の待避で合計20分、走行時間が10×5区間の50分で、東京・名古屋間は70分ということになる。ノンストップタイプの倍近い所要時間である。

これがBルートだと長野県が3駅設置を要求しているので、中間駅は6駅、駅間は7区間となり、平均は約47km。加減速区間は330kmのうち196kmにも及ぶ。最高速度が出せるのは全線のうち4割に過ぎない。待避時間が30分、走行時間が約73分で東京・名古屋間の所要時間は103分である。ちょうど今ののぞみくらいだな(笑)。

かなりダイヤ編成上のボトルネックになりそうである。そこそこ需要があったとしても1時間に2本以上の各駅停車タイプを運行するのは困難だと思われる。JR東海の本音は中間駅は設置したくない、だろう。

長野県サイドから見れば、確かに諏訪地域から東京まで1時間以内で到達できる、というのは悲願かもしれないが、そのために国民レベルで失うものが大きい。冷静に考えれば、在来線の中央東線の改良が妥当なところ。山岳区間が多いので困難かもしれないが、最高速度130km/hではなく160km/hを目指した改良をJR東日本にはたらきかけたらどうか。その方が沿線の各自治体にとってもメリットが大きいはずである。変化球としては諏訪から北陸新幹線佐久平駅あたりまで北越急行(新潟県)のような高規格の短絡線を建設するというのもありかもしれない。

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コメント

>250km/h/秒
死にます(笑)。

それはさておき、飯田駅は勿論、甲府駅も不要でしょう。どうせ地元全額負担でなければ建設しないんですから、待避線の長さを10kmくらい見積もって、地元に駅建設を諦めさせるのが正解ですね。全列車とも品川の次は名古屋、これでいいんです。

投稿: 五月原清隆 | 2009年1月12日 (月曜日) 23時59分

>>五月原さん

確かに死にます(^_^;)。2.5km/h/秒の間違い(笑)。ご指摘多謝。

ところで、中間駅不要というのは、本音の部分では私も同意見です。列車の通過速度とダイヤ編成を考えれば、延長10km必要かどうかはともかく待避線の長さが今の東海道新幹線よりも必要なのは確かです。

実際には政治決着するのでしょうが、それなら各駅停車は1時間に1本ではなく、今の安中榛名、いわて沼宮内程度でよいでしょう。

投稿: フロレスタン | 2009年1月13日 (火曜日) 10時24分

不肖、諏訪人ですが、貴説賛成であります。
現在の在来線特急で諏訪から新宿まで2時間です。北越急行なるものも不要でしょう。
いずれにしても、当地諏訪にとっては経済効果は微々たるもの。
首都圏まで日帰り圏であります。

投稿: 閑話ノート | 2009年1月17日 (土曜日) 20時55分

>>閑話ノートさん

はじめまして。コメントありがとうございます。
地元の方の「冷静な」判断を歓迎します(^_^)。まあ、私が物事を決めるわけではないですが(^_^;)。

リニアのBルートをごり押しして長野(特に諏訪、伊那地域)のイメージを下げ、かつ実はあまり経済効果がなかった、という結論よりは、在来線の強化で実を取った方がよいと思います。工事などで地元に落ちる金もそちらの方が多いと思います。

あ、ちなみに私の中には北信地域の血が流れています(^_^;)。

投稿: フロレスタン | 2009年1月18日 (日曜日) 17時20分

典型的な税金泥棒の論理ですね。
しかも、リニアで直結になったら、長野県の金持ちは都内で買い物するようになりますし。
宮崎県の高速道路から騒ぎと程度は同じです。
実現すると地元の産業に致命的なダメージがあることを理解できる程度の知性を持つ知事を住民が選べないとしたら、これは自己責任です。

投稿: takeyan | 2009年1月25日 (日曜日) 19時14分

>>takeyanさん

知事ともなれば、ストロー効果というのも学習していると思うのですけれどねえ。

実質よりもリニアを地元に引っ張ってきた、という「勲章」が欲しいのでしょう。

投稿: フロレスタン | 2009年1月25日 (日曜日) 20時59分

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