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2008年12月18日 (木曜日)

絶版

私事で恐縮だが、2001年9月に共編著で京都の学芸出版から刊行してもらった「市民版まちづくりプラン実践ガイド」が先月末で絶版になったという連絡をもらった。それ故、ダラダラと貼り付けていた右のサイドバーのamazonへのリンクも外した。自分の中ではとっくに過去のものになっていたので、今頃絶版か、というのが正直な感想だ。

型どおりなのだろうが、版元から送られてきた書類には「ご高著」という言葉が記載されている。しかしその直後には「販売継続の見通しが立たず」(笑)とあるから、とても慇懃無礼に響く。こういうのは嫌いだ。たくさん著作物を世に送り出している人は、こういう慇懃無礼な書類もしょっちゅう受け取るということか。

初版1000部で確か第二刷が出たように記憶しているが、もともとそんなに売れる本ではないし(収入は印税ではなく原稿料方式だったので部数は関係なかった)、出てから7年も経過して「旬」ではなくなった。IT関係の記述もあるのだが、何しろ2000年頃の状況を反映しているので、out of dateもいいところだ。そして、今では「市民版」などと冠をつけなくてもいいくらい専門家の影は薄くなっている(出番が少なくなっている)ように思う。学者や官庁プランナー、一部の大家はその限りではないが。それはこの本を編集する時に自分自身で予測していたことでもある。大げさな言い方だが、1980年代から20世紀末までの自分の仕事の総括のつもりでつくった本だったが、50歳になった年にその本自体が消えるというのはなにやら象徴的でもある。

若い頃は、適切な規制によって良好な都市環境をつくる、ということを信じて疑わなかったが、今は正直そんな考えはあまりなくなっている。もちろん野放図でよいとは思わないが、行政の権限が大きすぎるのは考え物だ。

「まちづくり」という言葉とその担い手は私が学生だった頃と比較すると段違いに広がったが、その分中身は薄くなってしまった。担い手の数は多くなったかも知れないが、歴史や文化、自然といった要素を含めた都市のコンテクストを読める人は多くはないだろう。自分たちのまちは自分たちでつくる、とよく言われるが、そうした概念の底には、自分たちが一番よくまちを知っているという一種の驕りがある場合があり、それ故、実は自分たちのまちのことをあまり勉強しないで自己主張だけする人がいる、あるいは先入観や固定観念が強すぎる。もちろんそうではない、有能な人もいるので、そういう人が「まちづくり」の担い手である場合は、そのまちは幸福である。

9月に大学院の先輩である建築家・都市計画家の堀池秀人氏から著書"まちの遺伝子 −「まちづくり」を叱る"を贈っていただき、一読して共感するところが多く、最近の都市計画に対して抱いていた、そうした不満が少々解消できたような気分になった。この本のamazonへのリンクを右のサイドバーに貼っておくことにする。

しかし本を読んで鬱憤を晴らしているだけでは建設的ではない。これからは、都市の扱いが薄っぺらにならないよう、どうしたらいいか考えなければならないな。

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コメント

おや,あの本が絶版ですか……。出版業界も凄まじい不況のようで,特に地方の専門書店は辛いみたいですね。学芸出版社ぐらいでもねぇ……。

投稿: ぜっぴ | 2008年12月18日 (木曜日) 16時58分

>>ぜっぴさん

ご無沙汰してます。

出版業界の不況は、ずいぶん前からのようですが(最近会っていないF社のY社長が随分前に言ってました)、特に専門書は辛いでしょうね。中小の書店だと雑誌や売れ筋の新刊、それに漫画くらいしか置いてない。

学芸出版は刊行点数が多いので、書店での売り場の確保の問題もあるかもしれません。

投稿: フロレスタン | 2008年12月18日 (木曜日) 22時52分

堀池センセの本,さっそく取り寄せて読んでみました。御批判の部分はごもっともで,私も問題意識(というより危機意識。いや,絶望感かな)を同じうしますが,何となく「建築家に任せろ。素人は口を挟むな」的な雰囲気が垣間見えて,ちょっと……。

投稿: ぜっぴ | 2008年12月23日 (火曜日) 11時22分

>>ぜっぴさん

「建築家に任せろ。素人は口を挟むな」的な雰囲気、というのはあの書き方だと確かにあるかもしれませんねえ。

ご当人は国際的な賞をいくつも受賞している誇り高き建築家ですから、そういうプライドが出ているのだと思いますし、黒川紀章亡き後の丹下研の系譜では、黒川氏の下の世代の中核となる建築家の1人ですから。あとは編集者の問題もあるでしょうね。意図的な部分があるかもしれない。

建築家でもダメなのは徹底的にこき下ろされますから、建築家ならいいという問題でもない。基本的には軽薄なのが嫌いだ、という単純な問題だと思います(笑)。建築家の領分を勉強もしない素人が侵すのは問題なので、そのあたりに警告を発している堀池節として受け止めましょう。

ところで、「ぜっぴ」って絶版の語尾変化した形みたいですなあ、とボケをかましてみる(^_^;)。

投稿: フロレスタン | 2008年12月23日 (火曜日) 18時52分

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