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2008年4月 6日 (日曜日)

TBSによる洗脳番組

たまたまだが、TBSの「噂の東京マガジン」という番組の最後の方を見た。「農家デモ・野菜直売書に役所がノー」というもの(森本毅郎、小島奈津子司会、レポーターは笑福亭笑瓶、コメンテーターは北野誠、山口良一、風見しんご、リンク先の番組サイトには放送終了時点で先週の番組の内容が掲載されているので、もうすぐ今日の内容が登場するだろう)。

高崎市(旧群馬町)の話題である。
「地産地消」を掲げた「食の駅」という延床面積約1000平米の物販施設が、ここの市街化調整区域に立地し、開業後、行政の指導で売り場面積が縮小され、これに農家が反対している、というものである。

背景として、2006年1月の高崎市による周辺の旧群馬郡群馬町、箕郷町、倉渕村と旧多野郡新町の吸収合併(その後10月に旧群馬郡榛名町を合併)がある。施設の計画は合併前の旧群馬町の時代にもちあがり、市街化調整区域の開発ということで、開発許可権者は群馬県であった。そのため、県は大規模物販施設では認められないが、ドライブインならいい、ということで「便宜的」に許可をする方向で動いた。

しかし、合併後は高崎市が特例市ということで開発許可権者になり、高崎市は独自運用規定でドライブインでの物販コーナーは50平米以内にせよ、ということで売り場面積の縮小という事態に至った、というわけである。

番組は、「地産地消」を無条件によいものとし、農家も消費者も喜んでいるのだから、と行政を一方的に叩いていた。普段は「コンプライアンス(法令遵守)」を声高に叫ぶマスゴミだが、食の問題になると批判の基準はその都度変わるご都合主義になる、という典型である。国内の大手メーカーは本質的でないことで叩かれる(赤福、不二家、崎陽軒など)のに、シナ(天洋食品)にはほぼだんまり。そして今回は都市計画法違反の疑いが濃厚なのに、業者やそれを利用する農家を一方的に弱者に仕立て上げている。

「地産地消」は「地球温暖化防止」と同様に現代社会においては、批判を許さない絶対的な真理であるらしい。こういう空気は大東亜戦争前夜に似ているのではないか、と推測される。「地産地消」も「地球温暖化防止」も左翼の人達が大好きなスローガンだろうが、皮肉なことに彼らが警戒する「軍靴の音」はそのスローガンから聞こえて来るようだ。

まあ、そんな「戯れ言」はこの際どうでもいいだろう。ここにはより本質的な問題が多く潜んでいる。

農協が弱小農家の作物を少量引き取ってくれないから、こういう施設が必要なのだ、というが、それなら農協とは一体何なのか、ということには全く切り込んでいない。農協体制が国内農業の振興に全くといっていいくらい無能であった事への批判はないのか。

緊急避難的に今回のような事業者が対応するのは悪いことではない。しかし、何故「市街化調整区域」での立地なのか。旧群馬町は地図を見るとわかるが、郊外型店舗の立地ラッシュと言ってもいい。車社会の群馬県の典型のような場所である。旧群馬町の行政のご都合主義のなれの果てではないか、という疑念も湧いてくるが、そこは番組では一切触れられていなかった。

旧高崎市は、1968年の都市計画法施行以来、市街化調整区域での虫食い的開発が継続して行われた。これは私が大学院の時に検証した。そして行政が「住宅団地」をいくつも作ってしまうくらいである。
そうしたことへの反省から、1990年代に作成された都市マスタープラン(これも作成に私は関わった)ではコンパクトな市街化を目標に、中心市街地の役割の再評価と郊外での開発抑制が基調となった。そのことも経済成長と乱開発、市街地の無節操な拡大への反省から当然の流れであった。

ところが、今度は平成の市町村合併である。
高崎市は合併の結果、多くの郊外、中山間地、山林を抱えることになった。市内を流れる烏川(からすがわ)から水道水を取水しているが、その水源である長野県境にある鼻曲山まで市内になってしまったくらいである。烏川は国管理の一級河川だが、下流の利根川合流点付近の一部を除いてほぼ高崎市内を流れる「市内河川」なのである。

こうなると当然都市マスタープランのつくり直しが必要だが、これは現在進行中なのかな?
そして今回の施設も、番組によると地産地消施設ということで延床面積300平米までなら認める方向らしいが、その場合、建物を縮小せよ、ということらしい。早い話が今の建物は取り壊して作り直せ、ということのようだ。

しかし、それはあまりに杓子定規だろう。こういうことをしているから「コンプライアンス不況」が起きるのである。ここは例外として、建設行政お得意の「既存不適格」として、取り壊しないし建替え時期までは1000平米の施設のうち300平米を物販コーナーにするのが現実的だろう。

ドライブインでの物販面積は50平米などという根拠法令の明確でない一自治体の独自の運用基準に理はない。これは行政の暴走である。通達行政、要綱行政の残滓がここには見られる。こういうものは日本社会の公平性、透明性の確保のためには叩きつぶさなくてはならない。

いや、現行の都市計画法そのものが1968年施行、92年大規模改正(その後微細な修正は数知れず)が時代に合わなくなっている。市街化区域・市街化調整区域の線引きによる土地利用純化(市街地と非市街地を区分する)と地域地区による用途純化(用途地域規制を手段に住宅地、工業地、商業地を原則として分離する)は、歴史的に見れば、その根源は18世紀末からの英国の産業革命による都市の混乱への対応策にあるといってもよい。著しい過去の遺物なのである。都市計画法に大規模小売店舗の立地規制を委ねたのも失敗と言っていいだろう。

道州制が最良の解答であるかどうかは別として、それも含めた地方自治のあり方の根本的な見直しと、都市行政、農政の抜本的な見直しが必要な時期に来ていることは間違いない。

それから、高崎市の職員の人達よ、「前任者がいないので詳しいことは分からない」というのはやめようよな。これは番組でも批判されていたが、当然である。ことは高崎市に限らない。こういうことの積み重ねが社会保険庁で起きると5000万件の不明記録になるのだ。

最後に、今回のケースをいささか茶化し気味だがわかりやすく説明してみよう。
爺さん婆さんが軽トラックで少量の野菜を郊外の直売所に持ち込んで収入を得ようとし、これまた爺さん婆さんの一般消費者が3ナンバーの乗用車でその直売所に殺到して安い野菜を購入しようとしている、というのが実態なのだ。それに地産地消というお墨付きを与えて絶対化し、悪法と化しつつある都市計画法ではあるが、それを遵守しなくてもいい、と免許事業者であるテレビ局が堂々と主張しているのだ。

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受信: 2008年4月28日 (月曜日) 10時44分

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