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2006年1月 4日 (水曜日)

最初から担当記者がこんな調子では新企画も先が思いやられる

毎日新聞は平成18年の企画として「理系白書06」なるものを特集する。「ニッポンは強いか」というタイトルだそうで、担当記者のブログによると「「強いか」、というのは、科学技術のレベルや独創性や科学教育の中身が、海外に比べて優れているか、という問いかけである。理系白書が主張してきた『人材こそが宝』『日本の科学技術のよい部分を戦略的に活かすべきだ』というスタンスを保ちつつ、視点を世界に広げて日本を位置付けたいと思う。」のだそうである。

その元村記者が新年早々発信箱でなかなか香ばしい「ニッポン万歳」記事を書いた。
発信箱:江戸のロボット=元村有希子

まず、ロボットということでドラえもんの登場である。困った時にドラえもんに頼るのは怠け者だとシナ人に言われた、とある。確かに野比のび太は怠け者であるよ。ああいう子供がいたら困ったものである。でもね、自分の非を認めることをせず、困った時にすぐに日本を叩いて金をせびろうとするシナにそんなこと言われたくないね。

「日本人にとってのロボットは、幸福をもたらしてくれる存在であり続けてきた。その愛情に支えられて、日本のロボット産業は発展している」のだそうだが、最初この文章の意味がよくわからなかった。また俺の読解力がないのかね、と思ったよ。よく読むと、日本人がロボットに愛情もっていて、その愛情がロボット産業を発展させている、ということのようだが、本当かね?多くの日本人はロボットなどに通常は無関心だと思う。アニメは別として(笑)。

関係者の熱意と努力こそがロボット産業を発展させているのではないかな。
本当に理系の見方、科学者・技術者の味方を任じるのであれば、「日本人の愛情」などと抽象的で曖昧なものを第一に賛美するのではなく、現場の努力にまずは言及すべきではないのか。

さて、幕末の佐賀藩の田中久重によるからくり人形である「文字書き人形」に言及するに至って、1つ気がついた。ドラえもん、鉄腕アトム、鉄人28号などが並んでいて、記者が日本人にとってのロボットはこれだという認識をしているらしいことがわかる。アニメは別と上で書いたように、確かにこれらは人間型であって親しみやすさを感じる。だが、これはロボットの一側面でしかない。どうも見た目の派手さ、華やかさだけに目を奪われているのではないかなあ。

科学史家の東野進という人が出てきて、久重は「人形ではなく人間を作ろうとしたんじゃないか」と言っているようだ。そう考えるのは自由であり、夢があってよろしい。でも歴史家であれば久重に関する史料にあたって、彼の真意を推測するくらいの慎重さが必要ではないかと思う。

そして最後の段落が笑えるのである。

「容易に妥協しない緻密(ちみつ)さは、戦後の日本を支えたモノづくり精神そのものだ。久重は明治維新後、東芝の前身となる工作所を75歳で創業している。外国の借り物ではない江戸の匠(たくみ)の技から、日本の製造業は生まれたのだ。」
日本の緻密なものづくりは戦後だけか、という突っ込みもあるが、まあそれは深入りしない。ただ戦前からの積み重ねがあるから、戦後の発展もあったのだ、と言っておこう。どうもこの新聞社全体がそうなのだが、戦前=暗黒という虚構に捕らわれているのではないかと感じるのである。

外国の借り物ではない江戸の巧みの技から日本の製造業は生まれた?
うん、確かにそういう側面もあるにはある。しかし明治維新に雇われ技師や学者として日本にやってきた米国人、英国人、ドイツ人、フランス人などは一体何なのだ?

多くの近代産業は欧米を模倣するところから始まった。江戸の巧みだけから現在に至る製造業が出てくるのか?
最初はマネでも、勤勉な日本人は欧米から多くのことを学び取ろうとした。勤勉な姿勢は確かに日本人の古くからの美徳であろう。そして有意の青年達はこうした外国人から学び、そしてある者は留学して、さらに欧米の科学技術の生の姿に触れ、それを日本に伝えて、更に発展させた。その発展過程で、江戸の匠という伝統が活かされて、和洋の融合が日本の近代産業を強くしたのだ。

様々な海外の文化を取り入れつつ、日本的な要素を加えて独自の文化を創り上げてきた少なくとも2000年の歴史を持つ日本の姿がここにも映し出されている。

いくら「ニッポンは強いか」という問いかけをしようとしても、最初からこんなずさんで脳天気な日本万歳では、新企画「理系白書06」に、客観的かつ論理的な展開など望めないではないか。

とここまで書いてきて、例のES細胞のウソツク教授のことを思い出し、この記事、韓国語で書いてあって日本という部分がテーハンミングッになっていたら、韓国の記事でも通用するのではないか、と感じた次第(笑)。

新聞お得意の、最初に(華やかな)結論があって、その結論に都合のいい素材を取材しているだけでは、一般受けする記事は書けるかもしれないが、理系白書の本当の目的は達成されず、むしろ地道に働いている科学技術の現場にいる多くの人間から疎まれる可能性すらあると指摘しておこう。

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コメント

遊びに来ました。

件の記事を読んでないので詳しいことは差し控えますが、欧米、特にアメリカに比べて日本はロボットに対してやはり愛情を持っていると思います。
アメリカではロボットとは人の形に似た何かで、それを作ることは神様の摂理に触れるという事で忌嫌う事があります。また労働者を排斥するものとして悪者にもされます。ですからアメリカ系の漫画などではロボット=悪の図式がむしろ多いです。最近は日本製アニメなので影響で変ってますけど、そんな物を見るのは極一部の人ですから、全体的な構図は今でも悪者だとおもいます。
一方で日本では「どらえもん」「アトム」の様に先達(?)がいたおかげで少なくともロボット=悪ではありませんよね。
そういう意味では「日本人はロボットに愛情を持っている」というのは的外れではないと思います。少なくとも嫌悪感を持ってはいませんよね。嫌悪感を持たない=愛情を持つではないですが、積極的な愛情ではなくても、みんなの心のどこかに「どらえもん」や「アトム」がいるというだけで「愛情を持っている」と表現しても良いと思いますけど。

ということで、海外からみると、やっぱり日本人はロボットに愛情を持ってますよ。なにせ、こうやって話題になるんだから。(笑)

実際に海外で暮して、現地の人と話をすると、日本に居ては味わえない物が味わえるわけで、上記の「神様の摂理」なんて大まじめに言われると最初は「へっ?」って感じでしたけどね。労働力云々は笑ったけどね。

投稿: John Smith | 2006年1月 4日 (水曜日) 17時20分

フロレスタンさん:

日本の‘強み’‘文化’の代表として、マンガのキャラクターをあげつらったのなら、HONDAの‘アシモ’を推してほしかったな~・・と思いました。本物のロボットですし、その方が科学環境部として説得力がある気がします。

『自分の非を認めることをせず、困った時にすぐに日本を叩いて金をせびろうとするシナにそんなこと言われたくないね。』

激しく同意です。元村女史は、何かというと脈絡なく中韓の方々を持ち出すので、不愉快ですね。

投稿: yellow cross | 2006年1月 4日 (水曜日) 20時03分

 確かに子供に「ロボットを書け」と言えば二足歩行ロボットを書くでしょう。また、アニメーションやアジモフのロボットシリーズに代表される一般著述物に登場するのは、二足で走り高性能コンピュータと高効率エネルギー源等を搭載した、驚くべき軽量で強靱な夢の機械です。
 しかし、件の記者は「日本のロボット産業」と書いています。現時点の「二足歩行ロボット」は実用性が殆ど無い試作品であり、各々の企業の先行投資と宣伝材料に過ぎません。現在の日本のロボット産業の主たる製品であり、稼ぎ頭は産業用ロボットです。そして、産業用ロボットという形の機械は、設計/製造された本人以外にはなかなか愛情を感じ得る機械では無いと思います。当社の工場や研究所にも産業用ロボットはありますが、運用担当者には使用している機械という、愛車や愛用している工具に対する物と同じ愛着しかありません。
 キリスト教圏であっても何処でも、産業用ロボットという機械が宗教的あるいは文化的な抵抗があるとは思えません。労働・雇用的側面から反対はあり得ますが...
 件の記者ですが、産業用ロボットの設計・製造現場どころか、運用現場である日本の製造現場すらをまともに取材したことが無いのではないでしょうか?

投稿: tygrysojciec | 2006年1月 4日 (水曜日) 20時16分

tygrysojciecさん:

ははは。日産でもホンダでもいいから、スポット熔接するための産業用ロボット見せたら、愛情は感じないでしょうね(^^;。

僕は、あれ見るとちょっと怖いです。ターミネーターみたいで(笑)。

投稿: JosephYoiko | 2006年1月 4日 (水曜日) 21時06分

皆さん、コメントありがとうございます。
昨晩は酔っぱらって帰宅したのでコメントつけられませんでした(笑)。

このコメント引き継ぐ形で、後ほど別エントリー立てます。

投稿: フロレスタン | 2006年1月 5日 (木曜日) 11時58分

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