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2005年12月 5日 (月曜日)

鳥ではなかった始祖鳥

以前から、始祖鳥は(その名前に反して)鳥ではないのではないか、という説は根強かった。そして、この度、アメリカの研究チームによって、化石から骨格を分析し、こいつは恐竜だろう、という結論を出した。一番大きいのは、足の親指が後ろ側に伸びていない(鳥は止まり木につかまれるように足の親指が後方に伸びている)ということのようだ。

で、この研究発表を報道する各紙の書き方を見てみると、微妙な違いがあって面白い。

毎日新聞:始祖鳥:実は恐竜だった 骨格に特徴、「鳥類」覆す発見

今回の分析は、ドイツで発見された新しい化石を用いているとのことだが、始祖鳥の化石そのものは以前にも見つかっているので、「発見」という見出しはあまり適当でないように思うが、それはともかく、国立科学博物館主任研究官の真鍋真氏の「始祖鳥と鳥類に共通のわずかな特徴がなくなり、始祖鳥と恐竜の間に境界線を引く必然性がなくなった」という談話を掲載し、始祖鳥は恐竜である、と断定に近い形の記事となっている。おそらく科学的にはこれが正しいのだろうし、アメリカの研究チームの結論を忠実に伝えているものと考えられる。

これに対して、例えば読売新聞:始祖鳥、肉食恐竜に近かった?…指の形から分析

この記事は、第二段落以降の分析内容を伝える記事は客観的であり、その点では毎日新聞よりは優れていると思う。これは両紙の科学報道一般に見られる特徴といってもいいように思う。しかし、見出しと第1段落だけはいただけない。どう見ても、始祖鳥が鳥であって欲しいという記者の願望が見え隠れするのである。

共同通信はこうである:始祖鳥、鳥より恐竜に近い 新化石で判明、論争も

獣脚類は鳥に最も近く、現代の鳥類の祖先との説が有力。それを補強する発見と研究者らは説明している。一方で足の形は鳥類と恐竜を区別する重要点とも言われ、今回の結果は「始祖鳥は鳥と言えるか」をめぐり、新たな論争も招きそうだ。
というのだが、これなんか毎日以上に未練たらたらの書き方に見える。サイエンスの原文を読んでいないので断定はできないが、他紙の記述も総合して判断すれば、今回の研究の結論は「始祖鳥は鳥ではなく肉食恐竜(獣脚類)だ」ということだろう。鳥と言えるかの論争は本当に起きるのか?専門家はそんなことはしないのではないかと思う。始祖鳥が鳥であって欲しいという記者の願望に過ぎないのではないかな。


朝日はこう:始祖鳥、実は恐竜だった? ドイツの化石調査

化石の写真の説明図も独自に作成しているようで、これはなかなかよくできている記事ではないかと思う。始祖鳥のことも「現在の鳥類の直系の祖先ではない」と記述しており、こういう前提があれば、未練がましい記事などなりようがない。真鍋研究官の話も、毎日よりもきちんと掲載されているようである。まさか捏造記事じゃないだろうな(笑)。政治や社会でもこういう客観的な書き方をして欲しいものである。

これまでの化石では、足の骨格がよくわからなかった、ということで想像図も鳥のような書き方をしているものがある。「恐竜のはくぶつかん」という東海大学自然史博物館のサイトにあるページのヒサクニヒコ氏による絵などはまさに親指が後方に伸びている。解説の文章も「まだ恐竜の特徴を多くもっています」と書かれていて、鳥に近いような記述になっている。また、思うにこの絵では羽毛も発達しすぎのような気がする。このページはおそらく全面的に改定しなくてはならないだろう。もちろん他にもあると思われる類似のページもである。

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コメント

こうして記事を読み比べるのはなかなかおもしろいですね。
わたしは、『朝日』にいいお点あげます。
興味深い話題(・・・わたしだけかな?)だから、朝日の『ののちゃんと、藤原先生の科学コーナー』←(名前忘れた)で、取り上げるといいのに。あれは、どこかに比べてよく書けてると思います。きっと、そんなに忙しくない記者が書いているんであろう。
ここには関係ないけど、雪と寒さは大丈夫ですか?

投稿: 圭 | 2005年12月 5日 (月曜日) 07時17分

>>圭さん

客観的に見て、朝日の記事が最も優れていますね。
毎日の某女史も見習って欲しい。

理科の中では生物が苦手だった私。まあ工学部出身者にありがちなパターンだと思いますが(^_^;)。鳥や恐竜も特別興味があるわけではない。でも、生物の進化だけは関心あるんですよねえ。

雪と寒さですが、ここ数日は日本の主要都市では東京が一番気温高いんですよ。昨日少し雨が降りましたが、たいした量ではなかった。もっとも私は寒いの好きなんで、苦になりませんね。

投稿: フロレスタン | 2005年12月 5日 (月曜日) 12時01分

フロレスタンさん、

この手の生物系の話は興味はあっても、あんまり詳しくないので頓珍漢なことを考えてるのかも知れませんが、「鳥の定義」って言うのがドコまで明確に決定されてるかによって、話が変わってくるかも知れませんね。例えば「カモノハシ」は、お乳で子供を育てるんでほ乳類に位置づけられてますが、卵を生むんですよねぇ。「始祖鳥」が爬虫類と鳥類の中間に位置してるとしたら、在る部分は恐竜的で、別の部分は鳥の特徴を持っている状態やと、定義づけの条件次第でドッチにでも変わりそう。

投稿: 温泉カワセミ | 2005年12月 6日 (火曜日) 00時16分

>>温泉カワセミさん

カモノハシはそうですねえ。あと卵生じゃないけど有袋類の赤ちゃんて未熟児で生まれてくるので、お母さんの袋の中が卵の殻の中のようなものかもしれません。

鳥の定義か。そうですねえ。焼き鳥にして食えるかどうか(笑)、とか、鳥インフルエンザで死ぬかどうか、とか(^_^;)。

今回は足の第一指の向きといのうが決定的なようで、それが鳥類の特徴だとか。真鍋さん(かをり、ではない)の談話に寄れば、もはや始祖鳥は鳥類と爬虫類の中間ではなく、爬虫類だ、ということのようですね。

まあ、こういう曖昧模糊としたところを、いろいろな証拠の分析や実験、観察などで解明していくところが科学の面白いところでありますな(^_^)。

投稿: フロレスタン | 2005年12月 6日 (火曜日) 11時20分

突然すみません。「始祖鳥」の話でやってきました。
分岐分類上、鳥と鳥以外の恐竜(マニラプトラ類など)の境界は「始祖鳥」それ自体なので、始祖鳥が鳥でなくなるということはないらしいですよ。(正確に言えば「始祖鳥と現生鳥類の共通祖先以降の生き物」が「鳥」と定義されています。)
サイエンスの原文にも「鳥ではなく恐竜だった」と明確には言及していないようですね。

投稿: 通りすがり | 2005年12月15日 (木曜日) 00時43分

すみません。こういうコメントに「通りすがり」というハンドルネームを使うのには、まともに反応する意欲が失せるのですが。

今回の発表で、おっしゃるような境界や定義が変更される可能性もあるのではないでしょうか。

サイエンスの原文の記述になくても、その発表をどう解釈するかが、今後の科学論争の出発点でしょう。

投稿: フロレスタン | 2005年12月15日 (木曜日) 01時25分

 お取り上げの新聞記事なのですが、これが各方面からブーイングを受けていたみたいです。「始祖鳥が鳥ではなかった」ということは行き過ぎた報道だったらしいですね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A7%8B%E7%A5%96%E9%B3%A5
http://homepage1.nifty.com/archaeo/dinobird/shisochou.html
http://437.teacup.com/shisochou/bbs
http://news18.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1133503107/
http://www2.aaacafe.ne.jp/free/alpe/ac.bbs

 サイエンスの元記事の日本語版を読んでみたのですが、「最古の鳥は恐竜のような足を持っていた」ということで、始祖鳥が鳥でなくなるという表現は読み取ることができませんでした。
http://www.sciencemag.jp/highlights/20051202/index.html

投稿: 亮一 | 2005年12月15日 (木曜日) 09時45分

>>亮一様

情報ご提供ありがとうございます。
私も専門外で、単なる知的関心の領域を出ませんので、ご指摘の件、いろいろと読んでみてまた自分なりの考え方を整理してみることにします。

まあ、サイエンスの原文読むのが一番なんですけどね(笑)。

投稿: フロレスタン | 2005年12月15日 (木曜日) 11時37分

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