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2005年10月15日 (土曜日)

官民とも「お上意識」から脱却せよ

今日10月15日付けの日経新聞夕刊4版の社会面(10面)に「文化財守るNPO育て」という見出しで、文化庁が活動に補助金を出したりモデルを紹介する、という記事が掲載された。こういう施策は一般には「善政」として歓迎されるのだろうが、日本における「官」と「公」というもののあり方を考えると、批判的にならざるを得ない。

独自の発想で文化財の保存・活用を進めるNPOに補助金を出す、ということだが、こういうのは得てして利権になりやすい上、補助金という縛りが逆に自由な発想を阻害する危険性がある。役所の補助金というのは通常目的が限定的であり、どういう効果があったかという評価よりも、会計検査などで目的外使用がなかったどうかという否定的な観点からのチェックが入るからだ。

補助金は年間10団体に対してそれぞれ140万円程度、5年間で50団体に補助するというのだが、補助金の申請や報告の手間などを考えると140万程度ではあまりありがたい金額とは言えまい。

行政がNPOに補助金を出す時に、本当に恣意的な判断は入らないのか、ということから利権に結びつく可能性が考えられる。たかがこの程度の補助金でも、である。

最も本質的な問題としては、上記の行政の判断とも関連するが、住民や企業などの寄付が直接NPOに入れば、本当に支援したいと地域の人達が考える団体にお金が回る。補助金ではそれは困難である。しかし現実には寄付金の税額控除などの優遇制度が不十分なので(このことは以前からずっと指摘されているがあまり状況は変わっていない)、これができないのが日本である。税金として行政に支払うか、「第二の税金」としての寄付を公益的な活動を行う団体に支払うかの選択肢が日本には事実上存在しない。

また、都道府県が「文化財NPO」を養成する際のマニュアルも作る、というのだが、大きなお世話だろう。そもそも行政がNPOを指導する、というのがお上的な発想であり、元来両者は「公」あるいは「公益」を担う事業体として、対等の立場であるべきなのだ。

小泉流の「官から民へ」という流れで言えば、文化財行政を文化庁や地方自治体が独占するのではなく、NPO法人などにも門戸を開けばよい。個々の技術、ノウハウ、知識の蓄積では行政を遙かに上回る団体もある。

さて、お上意識の強い日本では、「官」と「公」がしばしば同一視されるが、これは間違いである。少なくとも現代社会においては間違いになりつつある。
英語では「公的主体」群をPublic sectorといい、民間事業者群をPrivate sectorという。日本では行政体としてのGovernment, Municipality, Local authority, etc.といった主体がしばしばPublic sectorとして考えられるが、これは「官」であり「公」の一部に過ぎない。Publicの概念からすればNPOもこの範疇に含めてよい。英国などではNPOなどをVoluntary sectorなどという言い方もするが、これは便宜的、過渡期的なものだろう。

電力会社や通信会社、あるいは今月民営化とされた高速道路会社なども形態は株式会社だがPublic sectorである。民営化されても郵便局はPublicなのである。3セク(第3セクター)という官民共同出資の事業体は、PublicでもPrivateでもない第3のという意味で名付けられているが、レジャー施設の運営などが主目的であればPrivateであろうし、公共交通の運行などを行っていればPublicである。第3の、などという曖昧な定義づけをしているから、官の悪いところ(非効率)と民の悪いところ(利益至上主義)の双方が表面化してしまうのである。

NPOをPublic sectorとして実質的に認知せず、補助金やマニュアルなどで行政の指導下に置こうとするのでは、本当の意味での「NPOの育成」(これも本当はおかしな概念で、NPOは行政が主導的に育てるものではなく、行政も含めた地域社会全体が育て、またそうした支援を受けつつも経営体として自立的に成長すべきものでもある)にはつながらない。

政府系金融機関の改革なども重要ではあろうが、小泉内閣の最後の置きみやげとして、ここは一つ、日本全体を「NPO自立のための構造改革特区」として指定し、NPOへの寄付金や入会金、会費などの支出がすべての個人・法人に対して大幅な税額控除になるような制度改革実験をしてみたらどうだろうか。

財源??特別会計の見直しがあるではないか。ここのところの石油高で道路特会のふところは相当豊かなのではないのか。石油製品の二重課税という問題があることは承知しているし、それが好ましいことでないこともわかっているが、とりあえず別問題である。それが困難なら、時限的に消費税率を0.5%くらい上げてもいいではないか。消費税の際限ない値上げに通じる、というあなた。本当に現行の直接税主体の累進課税が公平だと思いますか。それに、こういう制度改革をすれば、小さな政府が加速して、際限ない税率の上昇には結びつかないはずなのである。

日本はすでに十分に小さな政府だという主張が公務員の数の国際比較の結果あるが、問題は「官」が小さくなった分「公」も縮小してしまっていることである。欧米のNPO先進国では、今よりも「官」が小さくなっても「公」は縮小しないはずだ。要はPublic sectorの中でのadministrative bodiesとnon-governmental bodiesのバランスがとれているということだ。日本の公務員数が国際レベルで十分に小さいというならば、それに見合っただけのnon-governmental bodiesの自立と成長がなければならないはずなのだ。小さな政府が非効率にNPOに補助金を提供し「育成を指導」するなどというのは本末転倒なのである。

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コメント

「補助金の申請や報告の手間などを考えると140万程度ではあまりありがたい金額とは言えまい。」

まったくです。公平性が担保されたとしても、行政側の自己保身のために膨大な資料を要求されるのも癪ですが、最も問題なのは、リスクはあっても志の高いNPOに補助金が出されず、行政の好む作文能力のあるNPOにだけに配分される恐れがあることです。

「日本全体をNPO自立のための構造改革特区として指定し、NPOへの寄付金や入会金、会費などの支出がすべての個人・法人に対して大幅な税額控除になるような制度改革実験をしてみたらどうだろうか。」

大賛成です。直ちに実現してもらいたいですね。

投稿: wanpau | 2005年10月16日 (日曜日) 20時11分

>>wanpauさん

そうなのですよね。
下手すると役所に出す書類の作成の人件費で140万円超えたりしかねません。

私の知っているひどいケースでは(文化庁ではありませんが)、同じ出発点から目的地まで別々にタクシー使った二枚の領収書があり、金額が違っていたのですが、なぜ違うのか、としつこく食い下がった莫迦財団職員がいました。タクシーの料金は電車やバスの運賃と仕組みが違うのですがねえ....

この提案、内閣府にでも出してみますかねえ。却下されそうですが(笑)。都市再生本部には以前一度提案を出したことがあるのですが。

投稿: フロレスタン | 2005年10月16日 (日曜日) 23時16分

フロレスタンさん、

「小さい政府」論の問題については、この前スーパーTSさんトコのBlogでもコメントしたんですが、「公」の中で「官」がどの仕事をどれだけ受け持つべきかという議論を全く抜きにして、「なんとなくウケが良いから」って理由で政治家が何の考えも無くぶちあげるのが話にならんと思てます。

『「官」として関わるべき仕事の議論→制度設計→小さい政府』と言う流れなら理解できますが、いきなりお題目に小さい政府が始めに決まってて、官の仕事の吟味も削減も無ければ、現状の特法・独法のような「外郭団体」が増えるばっかりで、結局は「隠れ大きい政府」が続くだけなんですよ。

投稿: 温泉カワセミ | 2005年10月17日 (月曜日) 00時14分

控除で対応したいというのは民主党のマニフェストにあり、うすうす期待していたのですが、総選挙の大敗で露と消えました。
実は私の税制改革運動の仲間の人たちは以前、フロレスタンさんのおっしゃるような内容の請願を出したのですが、当然、ダメでした。

NGO(あえてNGOと書きます)を補助金で手足にしようという制度が、情けないことにNGOには歓迎されているという現実があります。NGOのお上意識、コスト計算(補助金申請の手間をコスト計算できない)の無能さを考えると、彼らの意識改革もまた、必要であると感じています。
金銭的に自立しないと、活動は自立できないのに。

投稿: takeyan | 2005年10月18日 (火曜日) 13時41分

>>温泉カワセミさん
重要なご指摘ですね。「官」(「公」とは異なる)が見えない形で大きいまま、あるいはかえって増殖する、というのは大いに問題です。

>>takeyanさん
全く同感ですね。
こういう考えをお持ちのtakeyanさんが地方議会の議員というのは心強いと思います。勘違いしている多くの団体を覚醒させる必要がありますね。

投稿: フロレスタン | 2005年10月19日 (水曜日) 22時32分

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